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その135:東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密

*基本データ

場所:東京国立近代美術館

行った日:2023/3

展覧会URL⇒東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密 - 東京国立近代美術館 (momat.go.jp)

イサム・ノグチ《門》1969年

赤黒から青に変わっていました。

原田直次郎《騎龍観音》1890年

2007年に重要文化財に指定。縦272.0㎝、横181.0㎝の縦長の大画面に龍と観音菩薩が描かれています。騎龍観音という日本の伝統的な画題を、西洋画の特徴である奥行きを感じさせる空間表現や陰影をつけた立体表現で写実的に描いています。おさえた色彩によるダイナミックな背景と体の緑と補色になる赤い炎を纏った躍動感のある龍により、白を基調にした観音菩薩の神秘性がより強調されています。さらに観音菩薩の背後にある光背が光の輪になっていることによりキリスト教聖母像をも連想させます。

直次郎は、明治14年東京外国語学校を卒業し、高橋由一の画塾で学び、明治17年ミュンヘンでドイツ官学派の堅実な画風を身につけ、明治20年帰国。しかし、当時の日本は、西洋美術排斥の風潮にあり、洋画家にとっては不遇の時代でした。そのような時代的背景の中で描かれた《騎龍観音》は、日本の伝統的な画題を洋画の技法で表現した、明治前期の洋画を代表する作品です。

高橋由一《鮭》1877頃

140.0×46.5㎝の縦長の画面に、荒縄につるされ、身の一部が切り取られている鮭が写実的に描かれています。技法は紙本に油彩、昭和47年に重要文化財に指定されています。詳しく見ていくと、画面全体に鮭だけを描くという大胆な構図ですが、茶色の背景に写る影により前方やや右正面から光がさしていることが見て取れます。その光による陰影が細部にわたる鮭の立体感を強調しており、鮭を吊るしている荒縄や干物になっている皮の質感も見事に再現されています。さらに一部が切り取られることによって現れた鮮やかなオレンジ色は、皮の銀色との対比によって、今切り取られたかのような生々しさまでも感じさせる明治初期の傑作です。由一がここまで写実的な鮭を描いた理由は、誰もが見たことのある鮭を描くことによって、西洋画の技法の精密性、そしてそれが日本の近代化にとって重要な要素であるということを伝え、洋画の普及を試みるためでした。

照明のせなのか、少しぼんやりした感じに見えてしまいます。笠間日動美術館の鮭の方が実際の板に描かれていたり、荷札のようなものがついていたり、よりリアルに見えます。⇒その128:笠間日動美術館 【高橋由一 もう1匹の鮭】 - 美術展・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com)

岸田劉生《道路と土手と塀》1915年

正方形に近いキャンパスの中に坂道のある風景が写実的に描かれています。空の高さを見ると季節は秋でしょか、木々も少し勢いを失っているようです。向かって左側の石垣と塀の質感の違い、坂道の踏み固められた土と右側の丘の土の質感の違いが見事に表現されています。画面には中心部に消失点があり、見る者の視線をそれぞれの質感の違いを感じつつ坂を上っていくように誘導しています。手前にある電柱の影が画面全体を引きしめています。こちらも以前東博で展示されていた時は写真撮影不可でしたが今回は可でした。

浅井忠《春畝》1888年

日本美術史を学んだ人は誰もが知っている有名な作品。

和田三造《南風》1907年

中村彝《エロシェンコ氏の像》1920年

菱田春草王昭君》1902年

鈴木長吉《十二の鷹》1893年