美術館・博物館・名建築 検索の備忘録

美術館・博物館・名建築のススメ

番外編:東京国立近代美術館 対話鑑賞

*基本データ

場所:東京国立近代美術館

行った日:2024/7

美術館URL⇒ サマーナイトトーク2024.7.12, 7.13, 7.19, 7.20 - 東京国立近代美術館 (momat.go.jp)

画面手前に誰もいないテーブルとイス、中央には話をしている店員らしき人が描かれています。レストランの店内でしょうか、木があるのでオープンスペースなのでしょうか、おしゃれな店の雰囲気が見て取れます。朱色・黒・白などの色を使って荒々しいタッチで描かれた店内は、まるで動いているかのようですが、逆に、表情の無い人物は風景の中に溶け込んでしまっています。よく見るとテーブルの上に飲み物の瓶などが置いてあるのがわかります。実際には客が座っていたのに画家の目には映っていなかったのかもしれません、人との関係が希薄だったのでしょうか。店内のおしゃれな雰囲気は画家の孤独感を強調しているようにも感じられます。

作品は 長谷川利行《カフェ・バウリスタ》1928年

 

白い釉薬と下地の黒のコントラストが雪解けの地面のようです。雪国では、冬は雪で地面が見えませんが、春が近づくと雪が解けて地面が見えてきます。しかし地面はまだ凍ったままの黒色です。そして春になると凍った地面も解けて茶色に変わります。下部の茶色は春を迎えた地面の色そのものです。この作品には花を生ける穴が開いていますが、そこからマンサクやふきのとうなど春の訪れを感じさせるものが顔を出すのかもしれません。子どもに聞くと「冬眠から目覚めたカエルが出てくる」と答えるかも。

作品は 十三代 三輪休雪《花冠》2003年

 

東京国立近代美術館の対話鑑賞には歴史があります。これからも勉強させていただければと思います。美術品を鑑賞し、借り物の知識ではなく、自分で感じたことを自分の言葉で表現できるようになりたい。

その191:高橋由一から黒田清輝へ

*基本データ

場所:栃木県立美術館

行った日:2024/6

展覧会URL⇒ 高橋由一から黒田清輝へ ―明治洋画壇の世代交代劇― (tochigi.lg.jp)

たまたま行った日が入館料無料の日、なんとラッキーな。

1972年開館の栃木県立美術館は公立の近代美術館の先駆けでした。設計は京都大学名誉教授でもあった川崎清氏。昨年シスレーの作品を購入し話題になりました。

倒木の危険があるため切り倒されてしまった、もう1本の「すずかけの木」に新しい枝が伸び、葉が茂っていました。

このスペース、現在はどのような使われ方をしているのでしょう、気になります。

来館目的は 高橋由一《鮭図》1878年頃 です、山形美術館寄託。

由一は7点の鮭の絵を残したと言われていますが、今観ることができるのは3点のみです。

1点目は、東京藝術大学美術館所蔵の重要文化財《鮭》1877頃 その135:東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密 - 美術館・博物館・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com)

2点目は、笠間日動美術館所蔵の《鮭図》1879~80年その128:笠間日動美術館 【高橋由一 もう1匹の鮭】 - 美術館・博物館・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com)

3点目は、この山形美術館所蔵の《鮭図》1878年 です。

この作品は129.0×37.0cmで、藝大美術館のものより少し小さく、笠間日動美術館のものよりは大きいです。下半分の身が残っているので藝大美術館のものと似ていますが、向きが左右逆です。単なる鮭の絵なのですが、明治初期、油彩の可能性を広めようとした由一の気持ちが伝わってきます。

他にも、神奈川県立歴史博物館のデータベースに高橋由一《鮭》明治17年と登録されてる作品があります。しかしながら同館の企画展では池田亀太郎《川鱒図》として出品されています。研究がすすみ、本当の作者が判明することはあると思いますが、なぜデータベースを修正しないのでしょう?(素人にはわからない深い理由があるにちがいありません・・・。)その177:神奈川県立歴史博物館 旧館 【 横浜 名建築巡り ④ 】 - 美術館・博物館・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com)

なお、美術館内は撮影不可。

その190:特別展「法然と極楽浄土」

*基本データ

場所:東京国立博物館

行った日:2024/5

展覧会URL⇒ 東京国立博物館 - 展示・催し物 展示 平成館(日本の考古・特別展) 特別展「法然と極楽浄土」 (tnm.jp)

平安末期、内乱や災害などで死が身近にあった時代に「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで誰でも極楽浄土へ行けると説いた法然の展覧会。

ポスターの写真は、国宝「早来迎」鎌倉時代平安時代の来迎図は、他の仏をお供にした阿弥陀如来が「オーケストラとともにドーンと登場」という感じで正面から描かれたものでしたが、鎌倉時代になると、阿弥陀如来が他の仏と一緒に雲に乗って「軽快なリズムとともにビューンと迎えに来る」という図柄になりました。それは平安の貴族中心の時代が、鎌倉の武士中心の時代になり、世の中のスピード感が増したからだったのでしょう。

仏涅槃群像 江戸時代

立体涅槃図、思わず細部に見入ってしまいます。

なんとなく若冲の描く象に似ています。

タツムリ

 

その189:デ・キリコ展

*基本データ

・場所:東京都美術館

・行った日:2024/5

・展覧会URL⇒ デ・キリコ展|東京都美術館 (tobikan.jp)

ジョルジョ・デ・キリコの回顧展。

美術史上のキリコの功績や作品解説などとは別に、日常の中に潜む非日常の世界を楽しめる展覧会。(形而上絵画ではない作品も多数あります)

その188:アブソリュート・チェアーズ

*基本データ

行った日:2024/5

場所:埼玉県立近代美術館

展覧会URL⇒2024.2.17 - 5.12 アブソリュート・チェアーズ - 埼玉県立近代美術館 The Museum of Modern Art, Saitama (spec.ed.jp)

椅子のコレクションで有名な埼玉県立近代美術館、その美術館が企画した椅子の展覧会、期待しかありません。

アブソリュートとは「絶対的・究極的」という意味だそうですが、実際にはデヴィット・ボウィの曲のタイトル「アブソリュート・ビギナーズ」に触発されたもので、その言葉からそれほど深い意味を汲み取らなくても良いのだそうです。

ミシェル・ドゥ・ブロワン《樹状細胞》2024年

岡本太郎《坐ることを拒否する椅子》1963年/c.1990年

オレンジと黒の椅子には座ることができますが、下から見つめられ拒否されています。

名和晃平《PixCell-Tarot Reading (Jan. 2023)》2023年

名和氏の作品は、現代美術を展示している美術館ではよく目にします。

宮永愛子《waiting for awakening -chair-》2017年

ハンス・オプ・デ・ビーク《眠る少女》2017 年

オノ・ヨーコ《白いチェス・セット/信頼して駒を進めよ》1966年/2015年

マルセル・デュシャン《自転車の車輪》1913年/1964年から始まる数々の展示に、椅子に関するイメージが大きく揺さぶられ、そもそも椅子とは何だったのかがわからなくなってきた頃に、この作品に出会います。

この椅子に座ると(なんと平日には座ることができます)、前の椅子には人が座り、お互いチェス盤を見つめている場面が想像できます。そして「椅子は人と人との関係を結ばせるためのものだったのかも」という思いが湧いてきます。

コレクション展でも椅子が展示されています。

倉俣史朗《ミス ブランチ》1934~91年

自分にとっての究極の椅子は、やはりこれ。ただ美しい。

椅子のコレクションで有名な美術館の椅子に関する企画展、期待通りです、すばらしい。

その187:建立900年 特別展「中尊寺金色堂」&久隅守景《鷹狩図屏風》

*基本データ

場所:東京国立博物館

行った日:2024/4

展覧会URL⇒東京国立博物館 - 展示・催し物 展示 本館(日本ギャラリー) 建立900年 特別展「中尊寺金色堂」 (tnm.jp)

展覧会期間終了間際だったため激混み。

金色堂の模型、実際の金色堂須弥壇には奥州藤原氏四代が眠っています。

ここからは、本館の総合文化展。狩野探幽門下四天王の一人 久隅守景《鷹狩図屏風》江戸時代 

これを観るためだけにでも来館したいと思える作品。鷹狩は江戸時代には将軍や大名の権威を高めるための行事でした。洛中洛外図屏風のような、斜め上方より全体を俯瞰する構図で描かれた八曲一双の屏風の画面からは、広がりは感じられますが人物がどの場所でもほぼ同じ大きさで描かれているため、奥行きはあまり感じられません。詳しく観ていくと、人物一人一人に動きや表情があり、その場の状況や雰囲気までもが伝わってきます、さすがです。

将軍および徳川御三家のみが捕獲をゆるされた白鳥を狩っています。

鷹に餌をあげている人や、右下にはたばこを吸って休憩中の人達がいます。一番手前の人の着物の模様は梅鉢紋?

こちらの獲物は鴨です。

木の下で遊ぶ子どもたちも描かれています。

船の上からも身を隠して獲物を狙っています。

将軍および徳川御三家のみが捕獲をゆるされた鶴も狩っています。

鷹に襲われる鶴の姿は悲壮感すら感じさせます、さすがです。

先頭で鷹を持つ人は徳川家の人でしょうか?

真ん中の鷹を持っている人の青い着物にも梅鉢紋?徳川家と前田家の合同の鷹狩の図?

スマホで宴会の予約を確認している幹事らしき人。(そんなわけありません)隣には将軍か殿様が乗られているのであろう立派な馬具の白馬が描かれています。

画面の中に描かれている緑の丘が、洛中洛外図屏風における金の雲と同じような役割を担っています。上方に描かれている獲物をかついで戻るところ、その下の狩りの瞬間、下方に描かれている食事の支度という異なる時空間が緑の丘によって閉じられています。

この屏風については、宮城学院女子大学内山淳一教授(2024年4月現在)が大変興味深い論文を発表されています。

その186:MOA美術館

*基本データ

場所:熱海

行った日:2024/2

美術館URL⇒MOA美術館 | MOA MUSEUM OF ART - MOA MUSEUM OF ART (moaart.or.jp)

MOA美術館へは、リニューアル前に、レンブラント光琳を観るために何度も来たことはあるのですが、リニューアル後は今回が初めてです。

能楽堂

黄金の茶室、茶道具も純金製だそうです。

野々村仁清《色絵藤花文茶壺》江戸時代

仁清のもう一つの国宝《色絵雉香炉》⇒その160:石川県立美術館【仁清の雉香炉】 - 美術館・博物館・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com) と同じく、常設展示されていますのでいつでも観れます。

昼食は敷地内の蕎麦屋さん。2人で入店したのですが、なんと見知らぬ方達と相席、店内からは外の景色も見えず、急いで食べて退店。

リニューアル前とは来館者の様子が全く違いました。