*基本データ
場所:流山市 森の美術館
行った日:2022/12
倉島友重 画伯の個展。画伯は院展の同人で、広島市立大学の名誉教授でもあります。
倉島画伯の作品には、一度描いた作品の上から全体に金箔・水金箔・銀箔を貼り、それをこすり落として下の色を出していく「箔洗い出し」という技法が使われています。肉眼ではよくわからないのですが、写真に撮ると照明があたっているところは白く光ります。(もちろんフラッシュは使っていません)
70.0×145.5㎝の横長の画面一杯に、左側から少しずつ朝の光が差し始め、夜の闇が後退していくような時間の流れと、それとともに目覚めていく合歓の木が描かれています。合歓の木は、夜になると葉を閉じることから、眠りの木と呼ばれ、そこから合歓の木になったという説もあります。合歓の木は、倉島画伯の作品では何度も描かれ、2012年の再興第9回院展では《合歓》という作品で、内閣総理大臣賞も受賞しています。その作品を紹介したコメントの中で「私の住む龍ヶ崎には、合歓の木が多い。ことに気に入っているのは、画室の西側の窓の下に広がる大きな窪地の中央の合歓の木だ。朝霧の中、夕べに勢いを増した柔らかな花群(花の群れ)に爽やかな微風が渡り、合歓の葉は目覚める」と話しています。一見すると朝靄の中に合歓の木が浮かび上がる幻想的な風景ですが、よく見ると緻密に描写されているのがわかります。
箔による光の反射で全体に霞がかかったような雰囲気を感じさせますが、近づくと枝にとまる小鳥や、下の画像のように箔の上からさらに加筆されて描かれている部分が見えてきます。
全体を霞で覆いながら、さらに観ようとするものにだけ別な世界を見せてくれる奥深い作品、離れて観たり近づいて観たりしながら、幻想と現実を行き来するような感覚を楽しむことができます。