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その112:諸橋近代美術館 【ダリの作品を観るならここ!】

いる*基本データ

場所:JR猪苗代駅からバスで25分

行った日:2022/9

美術館URL⇒サルバドール・ダリ コレクション|諸橋近代美術館 (dali.jp)

6つの展示室を館長を含む6名の学芸員が1室ずつプロデュースする「ROOMS」という展覧会。それぞれの展示室の展示内容から学芸員の伝えたいメッセージが伝わってくる大変興味深い企画です、なるほど展覧会にこのような切り口があるのかと感心しきりで、何度も見て回り、6個の展覧会を楽しんだような気分です。(パンフレット「モロビの住人。」も永久保存です)

日本でダリの作品を見たいと思ったらここ。多くの名品が常設展示されています。いつでもダリの作品が楽しめますが、冬期休業期間があるので注意が必要です。

雰囲気のある入口。

ここは入口わきのカフェスペース、窓からの景色もすばらしい。

磐梯山が見えます。

展示スペースで写真撮影可なのはここだけ。(座っていいのでしょうか?)ロビーにはダリの立体作品が多数展示されています。このロビーの一番奥に、来館目的のテトゥアンの大会戦》があります。

サルバドール・ダリテトゥアンの大会戦》1962年

304.0×396.0cmの大きな画面に、1859~60年に起こったスペイン軍のモロッコ進駐に対抗し、勇敢に戦うモロッコ軍の姿が描かれています。奥行きのある、躍動感あふれる雄大な空間の中に、多くの馬や人物が細部にいたるまで緻密に描かれています。抜群の描写力です。上空には聖母がモロッコ軍を祝福していますが、スペイン軍の刃(着ているものでわかります)の先が向けられています。モロッコの都市テトゥアンはスペイン軍に占領されてしまいます。

画面中央に、ダリとガラの顔が見えます。ダリはスペイン出身ですがモロッコ軍としてスペインと戦っています。「芸術界という戦場で作品を残し続けること、これは即ち戦いなのである」と語ったダリの芸術家としての生涯が重ねられていているようです。不安そうなダリと笑顔のガラの姿も二人の関係性をよく表しています。画面の中には多くの数字が隠されていますが、ガラの顔の下「4×7」は「28」を意味していて「聖書」の最初の言葉の数なのだそうです。ちなみに日本聖書協会の「旧約聖書」では「はじめに神は天と地とを創造された。」です、「新約聖書」はイエス・キリスト系図です。(でもこれはイエス様の系図ではなく、マリヤの夫であるヨセフの系図で血縁関係はありません。)

聖母もガラです。

「1」はここにあります。

表情がはっきりとわかるように描かれているのはダリとガラ、他にはこの人だけです。誰なのでしょう?

サルバドール・ダリ《蝶と葡萄の風景》1963~1964年

水曜日のカンパネラの「ガラ」という曲の歌詞に出てくる作品です。

141.0×105.1㎝、青と黄色の葡萄のような二重らせん、25頭の蝶、人の横顔と神経(?)が水彩で描かれています。杖に支えられている顔にはヒゲが無いので自画像ではなく、長いまつげから女性のようにも見えます。この作品が描かれる10年前の1953年にはDNAの二重らせん構造が発見されているので《蝶と葡萄の風景》は生命の誕生を表現しているのかもしれません。そう考えると、左上の葡萄のようなものにはピンク色の球が追加され、新しい命を象徴しているようにも見えてきます。背景の夜明けは始まりの意味でしょうか、なんともシュールです。(サインが2ヶ所にあるのはなぜなのでしょう、2つの作品を合体させた?)

サルバドール・ダリ不思議の国のアリス》1977~1984年 ブロンズ

215×119×60㎝、頭と手がバラの花。

ピンズもあります。

ダリ好きには夢のような場所です。今考えると夢だったのかもしれません。(そのくらいすばらしいということです)