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美術館・博物館・名建築のススメ

その62:印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション展

*基本データ

場所:三菱一号館美術館

行った日:2019/11

展覧会 URL ⇒展覧会について | 新しい私に出会う、三菱一号館美術館 (mimt.jp)

f:id:descri:20210814135433j:plain木の間から少女がのぞいています。

f:id:descri:20210817201904j:plainピエール・オーギュスト・ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》1887年

61.0×49.2cmの画面いっぱいに少女の肖像がパステルで描かれています。ドレスや髪飾りのブルーと補色の関係にある背景のオレンジが主役の存在感を強調しています。パステル独特のやわらかいタッチと色彩で肌や髪の毛の質感を表現し、印象的な青い瞳は、まっすぐに前を見つめています。 

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アンリ・ルソー《工場のある町》1905年

46×55㎝の画面に工場のある町が描かれています。やや高い場所から見ているような視点で、地面は大きく弧を描くように描かれ、遠景の中心には山が見えます。右下から工場へ向かっているのは材料や製品を船で運ぶための水路でしょうか。

この作品もルソー独自の様式化されたような画面構成によって描かれていますが、画題にある「工場」は木に隠されてしまっています。水路も工場にはつながっていません。なぜなのでしょうか、煙突から出る煙はルソーが1894年に発表した《戦争》という作品のなかに描かれた松明の煙とよく似ています。前面に広がる田園風景にはルソーの想いが込められているのかもしれません。

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ポール・セザンヌマルセイユ湾、レスタック近郊のサンタンリ村を望む》1877〜79年

64.5×80.2㎝、海と沿岸の町が描かれています。晴れた空とそれを映すように明るい色彩で描かれた海は印象派の絵画のようです。しかしよく見ると陸地の描写などに、縦・横・斜めの短い筆致で空間を構成する構築的筆触が見られることから、セザンヌが独自の表現を追及していたことがわかります。

f:id:descri:20210821194611j:plainマルク・シャガール《夢》1939~44年

78.7×78.1cmのほぼ正方形の画面に青を基調とした幻想的な情景が描かれています。1941年、シャガールは戦争によって亡命を余儀なくされ、妻のベラと一緒にアメリカへ移り住みますが、そこでベラは亡くなってしまいます。この作品はその同じ年に完成しました。

白いテーブルクロスの食卓に座っているのはシャガール本人で、白いウエディングドレスを着て天に昇っていくかのように描かれているのは亡くなってしまった妻なのでしょうか。シャガールの前にある皿の食べ物には手がつけられておらず、向かいの席の皿とコップには何も残っていません。下方には故郷ヴィテブスクの町並みが、空には楽器と花束を持った人たちが描かれています。鳥が乗った赤い船のようなものは妻を迎えに来たのでしょうか、思い出と悲しみが伝わってくるような作品です。