美術館・博物館・名建築 検索の備忘録

美術館・博物館・名建築のススメ

その173:キュビズム展 美の革命

*基本データ

場所:国立西洋美術館

行った日:2023/11

展覧会URL⇒【公式】パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ|国立西洋美術館 (exhn.jp)

セザンヌで始まりレジェで終わる展示構成、ピカソ、ブラックが中心ではないキュビズムの紹介、そしてメインビジュアルがドローネー《パリ市》と聞けば、いてもたってもいられません。

ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》1881年

パブロ・ピカソ《女性の胸像》1907年6~7月

ジョルジュ・ブラック《レスタックの高架橋》1908年初頭

ピカソ《アヴイニヨンの娘たち》1907年とともにキュビズムといえばこれ、という作品。「キューブ」という言葉が最初に使われたのもこの作品でした。空や木々の表現にセザンヌの構築的筆触と呼ばれる斜めの線が使われ、遠近法を無視した画面からは四角い家が転がり落ちてくるようです。

マリー・ローランサンアポリネールとその友人たち(第2バージョン)》1909年

真ん中がアポリネール、向かって右側がローランサン、2人の間にいるのがピカソ、左側の女性はピカソの恋人のガートルード・スタイン、当時の関係性が良くわかります。全体的に曲線で描かれ、やわらかな彩色も施されています、犬とかに少しキュビズムが入っているのでしょうか。

パブロ・ピカソ《肘掛け椅子に座る女性》1910年

ロベール・ドローネー《パリ市》1910~12年

ピカソやブラックのキュビズムとは異なる「サロン・キュビズム」の代表作。古典的な題材の三美神やエッフェル塔などが色彩豊かに描かれています。

フェルナン・レジェ《婚礼》1911~12年

画面中央の花嫁は白く見える薄ピンクのドレスを着ていて、花婿はその上にいるシルクハットをかぶった黄色っぽい人物で、花嫁の肩に手を置いています。周りには2人を祝福する人々が描かれ、活気あふれる婚礼行列の様子が見て取れます。2作品ともピカソ、ブラックのキュビズムとは異なっています。

マルセル・デュシャン《チェスをする人たち》1911年12月

マルク・シャガール《墓地》1917年

シャガールキュビズム、日本では東郷青児萬鉄五郎などもキュビズムの作品を描いていました。

ル・コルビュジエ静物》1922年

キュビズム以降、コルビュジエらが提唱したピュリズムは、モチーフがわかりずらいものではなく簡素な形態と厳格な構図や色彩を特徴としていました。

ル・コルビュジエ《水差しとコップ-空間の新しい世界》1926年

2019年に開催された「ル・コルビュジエ 絵画から建築へーピュリズムの時代」展でも観たもの。大成建設コレクション、大成建設コルビュジエの作品をたくさん持っています)

フェルナン・レジェ《タグボートの甲板》1920年

展示の最後は、近代美術から現代美術への流れを暗示するような作品。

今回の展覧会で1番好きな作品はアメデオ・モディリアーニ《カリアティード》20世紀

コンスタンティンブランクーシー《接吻》1908年も興味深い。(写真はありません)

その172:原美術館 ARC 2023/秋

*基本データ

場所:群馬県渋川市

行った日:2023/10

美術館URL⇒Hara Museum Web | 原美術館 ARC

前回訪問から1年半がたちました。⇒その95:原美術館 ARC - 美術館・博物館・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com)

ジャン=ミシェル オトニエル《Kokoro》2009年

天気が良いので、まずこちらへ向かいます。オラファー エリアソン《SUNSPACE FOR SHIBUKAWA》2009年

このレンズによって太陽の軌道を映し出す観測所です。

虹は、季節、時間、天気によって変化します、今日はこんな感じです。

「青空は、太陽の反対側にある原美術館/原六郎コレクション 第2期 秋冬季」展が開催されている館内に入ります。

以前は展示室内の撮影はできませんでしたが、今回は2つの展示室が撮影可でした。(撮影不可の作品もあります)

奈良美智《誰かが小さな声で叫んでる》《あの日の空から》《ただのガキは知らなかったのさ》《光の中へ》2023年

奈良美智《Harmlos sein》1984-2002年

《My Drawing Room》は貸出中でしたが、スライド作品が上映されていました。Drawing Room の中へ入ることができたこともよかったのですが、何よりこのスライド作品に見入ってしまい、BGMとともに深くしみ込んできます。Harmlosはドイツ語で「無害な」というような意味らしい。

こちらのピグメントプリント作品 12点も興味深い。(特に8番目が・・・大きな写真はありません)

奈良美智《days》2014-2018年(2点)

奈良美智《days》2020年

フェデリコ エレーロ《LANDSCAPE》2008年

鈴木康広《日本列島のベンチ》2014/2021年

廊下を抜けると目の前に広がる景色、牧場の羊をみながら觀海庵へ向かいます。

奈良美智《Mirror》《 Ocean Child》《Full Moon Night》《 Cup kid》《 No Fun!》1999年(右から)

円山応挙/呉春《雨雪山水》二幅 江戸時代

真ん中のオレンジ色はライトの光で2点とも水墨画です。

呉春の作品は、柔らかい線と筆触で夏の雨のしっとりとした空気を表現しています。人物もどこか牧歌的な感じがします。

応挙の作品は、素早いタッチと墨の濃淡により冬の澄んだ空気感を感じさせます。人物や馬は薄い墨と細い線でより写実的に描かれています。2作品とも行く先には家屋が描かれていて、もうすぐ到着するという安堵の気持ちまで伝わってくるようです。

奈良美智《Peaceful Night》2018年

奈良美智《Thinker》2018年

磯崎建築を眺めながら「カフェダール」の屋外テーブルでビーフシチュー。安定のおいしさです。

奈良美智《My Drawing Room》2004/2021年

以前はポストカードは無かったのですが、今回はありましたので早速購入。(品川の原美術館で購入しなかったことをずっと後悔していました、品川のものとは角度がちがいます)

その171:竹久夢二伊香保記念館

*基本データ

場所:群馬県 伊香保

行った日:2023/10

美術館URL⇒伊香保 観光なら竹久夢二記念館(大正ロマンの森)|伊香保 観光なら竹久夢二記念館(大正ロマンの森)|公益財団法人 竹久夢二伊香保記念館 (yumeji.or.jp)

街道沿いにありますが、ここから入ると広い駐車場に行き着くまでに、極端に細く急な坂道を下ることになるのでおすすめしません。伊香保方面から来ると館の手前に広い駐車場へ続く道があります。(少し距離はありますが、伊香保の石段から徒歩でも来れます)

竹久夢二の作品鑑賞だけではなく、訪れた誰もが楽しむことができるような配慮が感じられます。「一般公衆のレクリェーションに資する」ことも博物館(美術館含む)の業務ですが、観光地にある美術館として十分にその機能を果たしています。

作品は撮影不可。

竹久夢二《黒船屋》1919年

特別公開期間にしか観ることはできません。

竹久夢二榛名山譜》1931年

榛名富士と春の女神、佐保姫が描かれ、右上には「久方の光たたえて匂うなり 榛名の湖に春たちにけり」と詠まれています、モデルは笠井彦乃でしょうか。秋の女神、立田姫を描いた立田姫》1931年と対になる作品と言われています。

竹久夢二《青山河》1932年

夢二のアメリカ滞在時に描かれた油絵。屏風の裏には作品名と「山は歩いてこない やがて私は帰るだろう 榛名山に寄す」という言葉が書かれています。夢二は、交際を禁じられた恋人の笠井彦乃を「山」、自分を「河」と表し、ひそかに手紙を交わしていました。その後、2人は京都で一緒に暮らし始めますが、1年もたたずに彦乃は肺の病に倒れ、親元へ連れ戻され短い生涯を閉じます。画面の背景に描かれた「山」は榛名山、対角線上に描かれた人物の胸には「河」が流れています。

その170:平山郁夫シルクロード美術館

*基本データ

場所:小海線 甲斐小泉駅近く

行った日:2023/10

美術館URL⇒平山郁夫シルクロード美術館 | 平山郁夫シルクロード美術館 八ヶ岳高原 平山郁夫作品やシルクロード関連9000点以上の美術品を収蔵。JR中央本線「小淵沢」駅乗り換えJR小海線「甲斐小泉」駅前 (silkroad-museum.jp)

平山郁夫シルクロード美術館は、平山郁夫氏が設立したシルクロード研究所が母体となっています。平山郁夫氏の個人美術館ではないため、絵画の展示数は多くはないのですが、素晴らしい大作や平山氏が収集したシルクロードに関する貴重な資料を鑑賞することができます。

オランジュリー美術館のモネの部屋から着想を得たという展示室。

このような形で平山氏の代表的な作品を鑑賞できるのは、おそらく日本でもここだけかもしれません。

シルクロード行くキャラバン 西・月》2005年

アフガニスタンの砂漠を行く・月》2007年

パルミラ遺跡を行く・夜》2006年

《行七歩》1962年

平山氏のアトリエが再現されています、イーゼルの作品《病室の窓辺の花》は絶筆だそうです。

東京国立博物館 東洋館に展示されているものと同種の貴重なガンダーラ仏がたくさ展示されています。写真はありませんが「正倉院展」で見たような貴重なガラス器もたくさん展示されています。(このようなものを個人で収集することができるなんて・・・)

この2-3世紀の仏陀像は、まだ「螺髪」ではなくウェーブのかかった髪型をしていて、顔立ちもギリシャ彫刻の流れが残っています。

7世紀の仏陀像になると、髪の毛は「螺髪」に、顔立ちも東洋的になってきています。ガンダーラ(現パキスタン)で生まれた仏像芸術は、シルクロードを通って日本へ伝わります。

ミュージアムカフェ「キャラバンサライ」。ホームページに「三方ガラス張りの明るい店内から、JR小海線甲斐小泉駅や、八ヶ岳南アルプスの眺めを楽しむことができます」とありましたので楽しみにしていたのですが、三方ガラス張りがパーテーションとスクリーンで隠され、カフェから外の景色は全く見えません。特に八ヶ岳が見える側のパーテーションはかなり頑丈に作られています・・・。何故?(桃のジュースは美味しかったのですが・・・)

その169:中村キース・へリング美術館

*基本データ

場所:山梨県小淵沢町

行った日:2023/10

美術館URL⇒中村キース・へリング美術館 (nakamura-haring.com)

キース・ヘリングの個人美術館。(1人の作家の作品のみを展示するという意味での個人美術館)

2007年開館、建物の設計は河原温氏。館内の傾斜、イルミネーション、BGMなど入館と同時に日常を忘れます。

YAMAHA XT250

礼拝堂のようなスペースが設けられています。

一度は目にしたことのある図柄ばかりです。

リストだけで各作品にキャプションはありませんが、もはや作品名などは気になりません。

中庭のようなスペース。

美術館を出た後に、しみじみ来てよかったと感じるような場所です。

その168:画家の足跡

*基本データ

場所:康耀堂美術館

行った日:2023/10

展覧会URL⇒ 康耀堂美術館 (koyodo-museum.com)

自然の中に佇む、とてもきれいな美術館です。

鈴木昭男《点音(おとだて)》

中庭

展示室は左右に分かれていて、右側に日本画、左側に洋画が展示されています。

いい雰囲気です。

TVドラマのロケで使われてもいいくらいのクオリティーです。(昔、働いていた画廊でもよくTVドラマの収録が行われていました)

佐々木正《藪椿》1991年

ここは京都芸術大学付属美術館で、博物館実習の学生が毎年この時期にテーマに沿って展覧会を作っています。今回は「画家の足跡」という画面の中の筆致や線・色彩などを画家の足跡として、そこから画家は何を表現しようとしたのかを鑑賞者に読み取らせるという企画展です。美術の歴史、絵画の技法、作家の特徴、作品が描かれた背景など、多少の知識が必要な内容で展示が構成されていますが、それを意識して作品を観ると鑑賞も深まります。小野竹喬《春の空》、悳俊彦《廃村》が印象深い。竹喬には春夫という息子がいましたが26歳で戦死してしまいます。《廃村》には、枯草と藁ぶき屋根のほかに、2匹の鳥と雲の隙間から差し込む光が描かれています。作品の前で時のたつのを忘れてしまいます。(絵葉書が欲しかったのですが2枚ともありませんでした)来年も楽しみです。

その167:尖石縄文考古館 2023/秋

*基本データ

行った日:2023/10

場所:長野県茅野市

博物館URL⇒茅野市尖石縄文考古館 - 茅野市ホームページ (chino.lg.jp)

与助尾根遺跡

紅葉と竪穴式住居。

尖石縄文考古館

1年ぶりの 国宝「縄文の女神」。

神々しい後ろ姿。

1年ぶりの 国宝「仮面の女神」。

芸術的な後ろ姿。

喫茶コーナー、おやきもあります。

2003年 秋、暑かった夏も終わったのでどんどん歩きます。(与助尾根遺跡で拾った栗)