美術館・博物館・名建築 検索の備忘録

美術館・博物館・名建築のススメ

その188:アブソリュート・チェアーズ

*基本データ

行った日:2024/5

場所:埼玉県立近代美術館

展覧会URL⇒2024.2.17 - 5.12 アブソリュート・チェアーズ - 埼玉県立近代美術館 The Museum of Modern Art, Saitama (spec.ed.jp)

椅子のコレクションで有名な埼玉県立近代美術館、その美術館が企画した椅子の展覧会、期待しかありません。

アブソリュートとは「絶対的・究極的」という意味だそうですが、実際にはデヴィット・ボウィの曲のタイトル「アブソリュート・ビギナーズ」に触発されたもので、その言葉からそれほど深い意味を汲み取らなくても良いのだそうです。

ミシェル・ドゥ・ブロワン《樹状細胞》2024年

岡本太郎《坐ることを拒否する椅子》1963年/c.1990年

オレンジと黒の椅子には座ることができますが、下から見つめられ拒否されています。

名和晃平《PixCell-Tarot Reading (Jan. 2023)》2023年

名和氏の作品は、現代美術を展示している美術館ではよく目にします。

宮永愛子《waiting for awakening -chair-》2017年

ハンス・オプ・デ・ビーク《眠る少女》2017 年

オノ・ヨーコ《白いチェス・セット/信頼して駒を進めよ》1966年/2015年

マルセル・デュシャン《自転車の車輪》1913年/1964年から始まる数々の展示に、椅子に関するイメージが大きく揺さぶられ、そもそも椅子とは何だったのかがわからなくなってきた頃に、この作品に出会います。

この椅子に座ると(なんと平日には座ることができます)、前の椅子には人が座り、お互いチェス盤を見つめている場面が想像できます。そして「椅子は人と人との関係を結ばせるためのものだったのかも」という思いが湧いてきます。

コレクション展でも椅子が展示されています。

倉俣史朗《ミス ブランチ》1934~91年

自分にとっての究極の椅子は、やはりこれ。ただ美しい。

椅子のコレクションで有名な美術館の椅子に関する企画展、期待通りです、すばらしい。

その187:建立900年 特別展「中尊寺金色堂」&久隅守景《鷹狩図屏風》

*基本データ

場所:東京国立博物館

行った日:2024/4

展覧会URL⇒東京国立博物館 - 展示・催し物 展示 本館(日本ギャラリー) 建立900年 特別展「中尊寺金色堂」 (tnm.jp)

展覧会期間終了間際だったため激混み。

金色堂の模型、実際の金色堂須弥壇には奥州藤原氏四代が眠っています。

ここからは、本館の総合文化展。狩野探幽門下四天王の一人 久隅守景《鷹狩図屏風》江戸時代 

これを観るためだけにでも来館したいと思える作品。鷹狩は江戸時代には将軍や大名の権威を高めるための行事でした。洛中洛外図屏風のような、斜め上方より全体を俯瞰する構図で描かれた八曲一双の屏風の画面からは、広がりは感じられますが人物がどの場所でもほぼ同じ大きさで描かれているため、奥行きはあまり感じられません。詳しく観ていくと、人物一人一人に動きや表情があり、その場の状況や雰囲気までもが伝わってきます、さすがです。

将軍および徳川御三家のみが捕獲をゆるされた白鳥を狩っています。

鷹に餌をあげている人や、右下にはたばこを吸って休憩中の人達がいます。一番手前の人の着物の模様は梅鉢紋?

こちらの獲物は鴨です。

木の下で遊ぶ子どもたちも描かれています。

船の上からも身を隠して獲物を狙っています。

将軍および徳川御三家のみが捕獲をゆるされた鶴も狩っています。

鷹に襲われる鶴の姿は悲壮感すら感じさせます、さすがです。

先頭で鷹を持つ人は徳川家の人でしょうか?

真ん中の鷹を持っている人の青い着物にも梅鉢紋?徳川家と前田家の合同の鷹狩の図?

スマホで宴会の予約を確認している幹事らしき人。(そんなわけありません)隣には将軍か殿様が乗られているのであろう立派な馬具の白馬が描かれています。

画面の中に描かれている緑の丘が、洛中洛外図屏風における金の雲と同じような役割を担っています。上方に描かれている獲物をかついで戻るところ、その下の狩りの瞬間、下方に描かれている食事の支度という異なる時空間が緑の丘によって閉じられています。

この屏風については、宮城学院女子大学内山淳一教授(2024年4月現在)が大変興味深い論文を発表されています。

その186:MOA美術館

*基本データ

場所:熱海

行った日:2024/2

美術館URL⇒MOA美術館 | MOA MUSEUM OF ART - MOA MUSEUM OF ART (moaart.or.jp)

MOA美術館へは、リニューアル前に、レンブラント光琳を観るために何度も来たことはあるのですが、リニューアル後は今回が初めてです。

能楽堂

黄金の茶室、茶道具も純金製だそうです。

野々村仁清《色絵藤花文茶壺》江戸時代

仁清のもう一つの国宝《色絵雉香炉》⇒その160:石川県立美術館【仁清の雉香炉】 - 美術館・博物館・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com) と同じく、常設展示されていますのでいつでも観れます。

昼食は敷地内の蕎麦屋さん。2人で入店したのですが、なんと見知らぬ方達と相席、店内からは外の景色も見えず、急いで食べて退店。

リニューアル前とは来館者の様子が全く違いました。

その185:旧日向家熱海別邸

*基本データ

場所:熱海

行った日:2024/2

施設URL⇒施設案内 旧日向家熱海別邸(旧日向別邸)(重要文化財)|熱海市公式ウェブサイト (atami.lg.jp)

大規模保存修理を終了し、2022年8月から一般公開を開始しています。駐車場は無いので、車は熱海駅近くにあるタイムズに停めます。坂道を登った先にあります。左側の赤い瓦の建物ではなく、右下の日本家屋です。館内の写真撮影は可なのですが、自由に見学する時間はなく、ガイドさんの解説を90分ずっとお聞きするため、写真も撮れませんでした。(ここに予約して来る方は、ある程度知識のある方だと思うので、解説ではなく鑑賞メインのほうが・・・。なお、撮影できてもSNSへのアップは不可です)

最後のアンケートの記入を急いで終わらせると、5分くらい庭に出て写真を撮ることができます。庭からの景色です。

ガイドさんは、上にある「海峯楼の水の反射」押しでしたが、宿泊すれば見られるのであまり興味はありません。隈研吾氏設計)

旧日向家熱海別邸はブルーノ・タウト設計の地下室が有名ですが、今回の目的は渡辺仁設計の日本家屋です。渡辺仁は東博本館、原美術館その26:原美術館 - 美術館・博物館・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com)銀座和光ホテルニューグランドその175:ホテル ニューグランド 【 横浜 名建築巡り ② 】 - 美術館・博物館・名建築 検索の備忘録 (hatenablog.com)などを設計しています。 

細かいところの写真を撮って、家でゆっくり日本家屋における渡辺仁らしさを見つけたかったのですが・・・残念です。

その184:特別展「本阿弥光悦の大宇宙」

*基本データ

場所:東京国立博物館

行った日:2024/2

展覧会URL⇒東京国立博物館 - 展示・催し物 展示 平成館(日本の考古・特別展) 特別展「本阿弥光悦の大宇宙」 (tnm.jp)

東博所蔵のもので、本館で何度か見たことのあるものも多いのですが、何度見ても素晴らしい。本阿弥光悦筆、俵屋宗達下絵《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》江戸時代 も長い状態で鑑賞できます。写真撮影不可なのが残念です。

その183:印象派 モネからアメリカへ

*基本データ

場所:東京都美術館

行った日:2024/2

展覧会URL⇒印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵|東京都美術館 (tobikan.jp)

1820年代、アメリカには、自然の中に神の姿を感じそれをそれをキャンバスに表現する、ハドソン川を舞台に風景画を描いたハドソンリバー派と呼ばれる画家集団があました。その流れと印象派がミックスされたような、アメリカならではのダイナミックな風景画が興味深い。

その182:DIC川村記念美術館

*基本データ

場所:千葉県佐倉市

行った日:2024/1

美術館URL⇒DIC川村記念美術館 | Kawamura Memorial DIC Museum of Art

DIC株式会社(旧 大日本インキ化学工業)が関連企業とともに収集した、20世紀美術に主眼をおいた美術品を展示する美術館。

美術館導入部分からすでに期待が高まります。

大変きれいに整備されています。

海老原一郎氏の設計、デザインモチーフは「重なる二つの円」だそうです。

清水九兵衛《朱甲面》1990年

エントランスホール

天井装飾、2つあります。

作品の撮影は不可ですが、現代アートの他にもレンブラント印象派など、他の展覧会や書籍などで目にしたことのある名品ばかりです。(作品が写らなければ展示室外の撮影はOKです)なお、主要作品37点には無料の音声ガイドが準備されていて、HPからアプリ⇒ 鑑賞ガイド | DIC川村記念美術館 がダウンロードできるようになっています。(事前に聞いてから作品を鑑賞するのもおすすめです)さらに、予約制ですが、毎日14時に館内を約1時間で巡るガイドツアーや、第3土曜日の14時からは対話型ギャラリートークも行われています。

どこの窓からの景色もすばらしい。

展示室の一角に茶席があります。エントランス付近ではなく、鑑賞の流れで立ち寄ることができる「展示室の一角」というところがうれしい。窓からは「絵画のような景色」を見ることもできます。

中央の建物はDIC総合研究所。

エントランスの天井装飾をイメージしたオリジナルの生菓子「光の華」。

フランク・ステラ《リュネヴィル》

目の前の建物は休憩室とレストラン「ベルヴェデーレ」、残念ながらひとりでは入りずらい、今度は家族で・・・。

あっ!あれは ジョエル・シャピロ《無題》

シャピロと言えば、磯崎新氏設計の福岡シティ銀行(現 西日本シティ銀行)本店の敷地内に《WALK》1988年という大きな作品がありました。銀座の画廊で働いていたころ、西日本方面担当だったため3年ほど福岡に部屋を借りて行き来していました。(四島司頭取が普銀転換を進めて福岡シティ銀行になったころです)福岡シティ銀行の各階には美術館といっても間違いではないくらい多くの美術品が展示されていました。(現在、建物は建て替えのため解体されてしまいました)

DIC川村記念美術館は、美術館としての機能も充実していて、スタッフの方も大変親切でいごこちのよい空間、1日かけてゆっくりと楽しみたい美術館です。