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美術館・博物館・名建築のススメ

番外編:埼玉県立近代美術館 MOMASコレクション 夏

*基本データ

場所:埼玉県さいたま市

行った日:2024/7

美術館URL⇒埼玉県立近代美術館 The Museum of Modern Art, Saitama

埼玉県立近代美術館には、地下1階に写真のような吹き抜けの展示スペースがあり、3点の彫刻作品が展示されています。どれもキリスト教に関係した作品で、それぞれふさわしい姿で作品のテーマを表現しています。

ヴェナンツォ・クロチェッティ《マグダラのマリア》1973~76年

マグダラのマリヤについては、新約聖書ルカによる福音書 8.2-3)の中に「イエス様によって七つの悪霊を追い出してもらったマグダラと呼ばれるマリヤ」と記載されています。さらに聖母マリヤとともに磔刑を見守りヨハネによる福音書 19.25)、復活したイエス様に最初に会ったのもマグダラのマリヤヨハネによる福音書 20.14-18)です。では、この作品はどの場面なのでしょう?マグダラのマリアは懺悔の図像として用いられることが多いのですが、左やや上方から強い風が吹いている状況を考えると、新約聖書ルカによる福音書 23.44-45)に、イエス様が十字架上で息を引きとられる時「太陽は光を失い、全地は暗くなって三時に及んだ。そして聖所の幕がまん中から裂けた」とあるので、その時に強い風が吹いたとする場面なのかもしれません・・・。しかしながら両腕で顔を隠している姿勢や体形が肉感的であることから考えると、やはり自分の罪を後悔している姿なのでしょう。その後マリヤはイエス様に七つの悪霊を追い出してもらい、行動を共にしていきます。ちなみにカトリックではマグダラのマリアも聖人の一人です。

ジャコモ・マンズー《枢機卿》1979年

ローマ教皇の最高顧問である枢機卿の宗教的な厳粛さが、もの静かな感じと簡潔さによって表現されています。枢機卿とは、絶大な権限を持ったカトリック教会組織の中で、ローマ教皇に次ぐナンバー2だそうです。ちなみにプロテスタントは聖書中心なので、教会組織にカトリックのような権限はほとんどありません。

船越保武《ダミアン神父》1975年

ハンセン病救済に献身的な働きをして倒れたダミアン神父のことを広く知らせるために、亡くなる直前のインパクトのある姿で制作されました。ちなみに神父のことをプロテスタントでは牧師と呼びます。

モーリス・ユトリロ《旗で飾られたモンマルトルのサクレ=クール寺院》1919年

この作品は、白の時代から色彩の時代へと移行していく頃の作品で、7月14日のフランス革命記念日に、寺院や建ものに国旗を掲げて人々が平和を祝う様子が描かれています。作品が描かれた1919年は第一次世界大戦終結の翌年でもあり、作家本人の平和を喜ぶ気持ちも強かったのでしょう。

サインの下にも「ジュイエ(フランス語で7月) 1919」とあります。

ユトリロの作品には当時の風景を正確に描写しているものも多くあり、この作品も現在の地図と重ね合わせると、サクレクール寺院の西側にあるテルトル広場西側のビルの屋上から見た景色とほとんど一致しています。さらによく見るとサンピエール教会と思われる建物の時計も描かれています。(16時少し前でしょうか)建物の屋根にある多くの茶色の植木鉢のようなものは、当時使われていた暖炉や炊事場の煙突の名残です。一つのビルに複数の家族が住んでたため、世帯の数だけ煙突があり、煙突の下には各家族の生活がありました。ユトリロの時代にはまだ使われていたものもあったそうです。(現在は消防法上、使用できないそうですが、パリオリンピックでのパリ市街の映像にはまだ多くの煙突が写っていました)ちなみにモンマルトルはユトリロが生まれた街です。

ヘリット・トーマス・リートフェルト《レッド・アンド・ブルー》1917年その後1918年に彩色

リートフェルトは、オランダの画家モンドリアンによって提唱された新造形主義のグループ「デ・ステイル」に加入していました。「デ・ステイル」は、従来の具象芸術に対して、非装飾性、単純性を追求し、水平線、垂直線、直角、正方形、長方形、三原色、客観的で普遍的な表現様式(単純な抽象)を目指し、作品の色彩を赤・青・黄の三原色と、黒・グレー・白に限定し、水平線や垂直線のパターン化された構成を理想としていました。

まさに「デ・ステイル」が提唱した姿をしています。

椅子の骨組みだけのようなシンプルさ。各部分がどうやって接合されているのかは外観からはわかりません、とても華奢な感じです。座り心地は、ぜひ確かめに行ってみてください。