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その44:ギュスターヴ・モロー展 ― サロメと宿命の女たち ―

*基本データ

場所:パナソニック留美術館

行った日:2019/5

展覧会 URL ⇒ギュスターヴ・モロー展 | パナソニック汐留美術館 Panasonic Shiodome Museum of Art | Panasonic

f:id:descri:20210723084850j:plainギュスターヴ・モロー《一角獣》(部分)1885年頃

115×90cm 、森で戯れる女性と一角獣が描かれています。この作品は「宝石細工のような色彩」「装飾性が豊かなモロー芸術の代表作」として知られています。よく見ると背景や、大きく描かれている手前の女性のドレスに塗り残しがあり未完成のように見えます。(サインが入ってるので未完の要素をのこした完成品?)

f:id:descri:20220208091357j:plainフランス象徴主義(最後の印象派展が開催された1886年~)の巨匠 モローの展覧会。象徴主義は従来の題材を用いながら、ある特別な意味を浮かび上がらせたり、目に見えない世界を表現しました。(ルドンやムンク象徴主義の画家、なるほどという感じです)会場にはサロメ・メッサリーナ・セイレーン・スフィンクスエウロペなどのファム・ファタル(宿命の女)を題材にした名画が展示されています。初期の作品は古典主義のようにも見えますが、今までにない構図と技法が特徴的です。今回の展示は作品が完成するまでに何枚も下絵を描き色彩や構図を検討していたり、実際の作品は最初に色面で構成され、その後、細部が描きこまれるなどの過程が見られるようになっています。ルオーやマティスも影響を受けていたことがわかります。(モローはルオーやマティスの絵の先生でした、フランスにあるモロー美術館の初代館長はルオーだそうです)

サロメは、新約聖書( マタイによる福音書 14.1-12、マルコによる福音書 6.14-29)に出てくるヘロデヤの娘、ヘロデヤはヘロデ王の妻ですが結婚を洗礼ヨハネに反対されヨハネを恨んでいました。サロメヘロデ王の誕生日の祝いに舞をまい、その褒美として母親ヘロデヤに相談しヨハネの首をはねさせました。《出現》1876年頃 ⇒展覧会のみどころ | ギュスターヴ・モロー展 | パナソニック汐留美術館 Panasonic Shiodome Museum of Art | Panasonic は、母親のヘロデヤに指示されたのではなく、サロメが自ら望んでヨハネの首をはねさせたということを象徴的に表現した作品。サロメの前に斬首された洗礼ヨハネの首が光を放ちながら宙に浮かび、美しい色彩と精神世界が目の前に広がります。

聖書には「イエス様の噂を聞いたヘロデ王は、洗礼ヨハネが死人の中からよみがえって、その力が彼のうちに働いていると言った」とあります。(イエス様と洗礼ヨハネは特別な関係にありました)ヨハネの首がサロメの目線より高いところにあるのは、ヨハネがよみがえって出現することを暗示しているのかもしれません。